奥田浩子のBeauty Memories

「 自信の色(カラー) 」

”衝撃的であった。あまりにも色の対比が美しくて、目を見張った。”

メイクアップの仕事を始めて数年たった頃、自分の中に大きな疑問がわいてきた。
それは、メイクアップの色を決めるときに、一体何が根本になっているのかということであった。
その人が着ている洋服?トレンド?はたまたその人の好み?どのような場所に行くのか?なりたいイメージ?
そんな時にパーソナルカラーの理論と出会い、かれこれ30年以上が経ち、その出会いが、今まで仕事を継続できた大きな力となっている。その人がもつ身体の色と調和する色をコーディネイトすることは、メイクアップだけではなく、ヘアカラーやファッションなど、すべてにおいて有意義で、失敗もない。パーソナルカラーは春夏秋冬という4つのカラーグループにわかれており、自身のカラーグループを身につけると間違いなく美しく見えるのだが、逆に、こんなにも多くの人がいる中で、たった4つのグループにしかわかれていないのも事実である。例えば同じカラーグループが似合う人であっても、老若男女それぞれに個性があり、ナショナリティがあり、ライフスタイルがあり、またその人の好みもある。そういった場合、そのカラーグループをどのように工夫して使いこなすのかが、重要なポイントになっているように思うのだ。

”初めて見た時は、衝撃的であった。デザインされたような美しいボディーカラーは、ボディーメイクをしているのかと思うほどであった。尋常性白斑まだら肌の、世界を虜にするトップモデル、ウィニー・ハーロウ 。”

テレビのインタビューで、「あなたは、素晴らしく勇気があるのね。」というその問いに、
彼女はこう、答えていた。
「私は勇気があるんじゃない。私には自信があるのよ。」

人にパーソナルカラーをアドバイスするその前に、人にはその人の「色」がある。カラーを分析して、
人を美しくする手助けをすることは、本来のその人の個性に自信をもってもらうための、一つの
架け橋になるのではないだろうか。
ウィニー・ハ-ロウは、自らの個性を最高の武器にした。
私は、誰もが持っている最高の個性を自信につなげてもらえるように「自信のカラー」を届けたい。

「 踊る形(シェイプ) 」

何の意味があるのか、つまらない授業だと思った。アーティストでもあり、大学の教授でもあった先生の、その日の課題は「線を描く」ことであった。ケント紙1枚をわたされ、定規と2Bの鉛筆で、ひたすら線を描くのである。とにかく、何本も、何本も、直線を描くのである。そんな授業のことを今、仕事をしている時に、とてもよく思い出す。
その人に最も美しい眉を描こうとする時に、いつもケント紙と定規と2Bの鉛筆が脳裏をよぎる。眉は、ちょっとした筆圧や描くスピードで、その仕上がりが随分と違ってくる。レッスンでは、できるだけ優しく描いてね、と教えるのだけれど、筆圧の調整はなかなか難しい。きれいに描きたいと思う気持ちが、どうしても余計な力を加えてしまうのだ。

「見てごらん。よーく見てごらん。同じ線はなかなか描けないでしょう。たった1本の直線なのに。
それも同じ鉛筆を使って同じ定規をつかっているのに。同じ線じゃないでしょう。
同じ線を描くのさえ難しいのだから、線をつないで形(シェイプ)を描くのは、もっと難しいんだよ。
そして、同じステップをふむように、踊るように線を描くと、一つのストーリーが生まれるんだよ。」
これがその授業の合評会での、先生の教えであった。

どんな顔にも必ずストーリーがあり、その中での眉の範囲は決して大きくはないけれど、
大切なプロローグを担っている。
さぁ、あなただけのストーリーを華麗なるステップで、眉を描くことから、今日もはじめてみませんか。

「 尊い質感(マテリアル) 」

鏡に映った風呂上がりの自分の身体。
ちょっと待ってよ。誰かに似ている。あそことここを隠すだけで、そう、確かに、よく似ている。わぉ、自分の父親だ。
なんだか年々父親に、どんどん似ていくような気がする。もちろん性別は違うのだが、何が似ているのかというと、
それは質感(マテリアル)なのである。肌の厚みやきめ、隆起のしかたや、なんとな~く醸し出す様々なマテリアルが、とってもよく似ているのだ。
メイクアップにおいてマテリアルを表現するときには、まずは化粧品の選択、使用する量や順序、そしてタッチが重要である。同じ材料であっても、表情のでかたは実に様々で、まだアシスタントの頃、パフにパウダーをとり、掌でどれほど温めるかによってマテリアルが変わることに、心底感激したことがあった。それほどに、マテリアルの表現は繊細なものなのだ。

今まで親子や兄弟姉妹でお越し下さる方を数多くレッスンしてきたが、そこでよく感じる事は顔や形や声などより、
マテリアルがとてもよく似ている、ということである。そして、そのマテリアルを感じた時、なぜだか、ふっと幸せな気分をあじわえるのだ。
父親と自分のマテリアルが似ているように、私と娘のマテリアルもよく似ている。
年老いた父親の背中を熱くしぼったタオルで拭いていると、自分の老後の背中をみたように思う。
寒い季節に娘と二人、リビングのソファーでブランケットにくるまりテレビをみていると、
その若さの弾力に、なつかしさを感じることがある。
もしも育児に疲れはてて、自分の子を傷つけてしまいそうになった時、年老いた親が情けなくて
哀しい気持ちになった時には、ぎゅっと抱きしめたり、手を握ってみてはどうだろう。 
受け継がれていくマテリアルは、やさしくそして尊いものだと、気づけるのではないだろうか。

「 デザインの三大要素である 色(カラー)と形(シェイプ)と質感(マテリアル) 」

シュウウエムラのアトリエ時代に、デザインを構築するには、3つの要素が必要であると教えられた。
これは、人をコーディネイトする場合においても大変重要であるが、
まず、そのまえに、人そのものがクリエイティブである。
そして唯一無二の存在である人を、色と形と質感でデザインすると、その人は、より一層、
輝きをますように思う。
そして、人は、もっと、その人らしくなる。 
あなたは、あなたらしく、もちろん、私も、私らしく。

今は亡き世界的メイクアップアーティスト植村秀先生に、2019年今の私の思いを捧ぐ。


奥田浩子のBeauty Memories

” 幸せになる、いきる顔 ”

顔の中の美しく整いすぎたラインや、まんまるとした大きさ、そしてすっきりした高さなどは、不思議なもので、嘘だと、わかる。
とても美しく仕上がっている嘘もたくさんあるが、なぜかちょっとした違和感がどこかにあり、
そこに必ず、目がとまってしまうのだ。
そんな嘘には、自分自身を美化したいと思う切実で、せつない気持があることを思うと
それを暴こうなどとは決して思わないし、もちろん否定だってしない。
けれど嘘をつく前に、一度でいいから メイクアップの真髄と出会ってほしかった、と思うのだ。
メイクアップをあきらめてほしくなかった、と思うのだ。
「メイクは習っても、結局うまくできない。だから、メイクを習う必要はない。」と、ある人がいったことがある。
もちろん、すぐには上手にならない。だってメイクは練習だから。だって顔は奥深いものだから。
そして、その人に必要なテクニックは、オンリーワンなのだから。
けれど「どうすればいいのか」がわかると、意外にたやすく、顔の美しさはあっというまに生まれてくる。
だから、ずっと一緒に生きてきた、そして、生きていく自分の顔と、真剣に向き合ってほしいと願う。
もっと、自分の顔を愛してみれば?と、思うのだ。
自分の肌の手入れをすることや、メイクを練習することは、すなわち自分自身への愛そのもの。
愛することが先なのか、愛せるように嘘をつくことが手っ取り早くて楽なのか。

今回の移転でいろんなものを断捨離したが、それは、また、新しい気持ちのスペースをつくることにもつながった。
その新しくできたスペースに、美容人生40年に向けて、これからしていきたいことを、少しづつ埋めこんでいこうと思う。

これから一番していきたいことは、いきる顔をつくること。

一人でも多くの人と出会って、いきる顔を提案すること。
心がいきる顔、自信をもたらしてくれる顔、人を思いやるマナーとしての顔、
メイクアップはその人の嘘の顔をつくるのでない、いきる顔をつくることだ。
その人の、その生きざまに嘘をつかない顔をつくることだ。
そして必ず、いきる顔は、「幸せな気持ち」 につながる。
美容には、それを叶える力がある。