
vol.1 二人のオードリー
メイクアップ&ヘアスタイリング部門で
2度のアカデミー賞を獲得したカズ・ヒロが
映画の世界にとどまらず
現代美術家として活動しているドキュメント番組が放映された。
世界に大きな影響を与えた人物をモチーフに
立体的でリアルな顔のアート作品を制作しているのだが
血管やしわの一本一本
肌のキメから毛穴まで
細部にわたって再現された“顔”の像は
うなるほど素晴らしい。
そんな彼が
『ローマの休日』で世界中をとりこにした時の若き顔と
ユニセフ親善大使となり
飢餓の子どもたちを救うことに尽力した晩年の老いた顔の
ハリウッド女優
オードリー・ヘプバーンを制作していた。
その作品を発表した場でのこと
訪れた人々は
若き日のオードリーよりも
老いたオードリーの顔の前で思いを馳せ
長い時間佇んでいたそうだ。
ゲストの一人であった
世界的に著名な女優が
インタビューにこたえていた。
「不思議ね。
若き日のオードリーは完璧なほど美しいのに
なぜか
老いたオードリーの前に立つと
皆
動くことができなくなるのよ。」
人の顔にはその人の人生が映っている。
どのように生きてきたのか
その生きざまを十分にかもしだす。
そして
それが魅力につながる顔になりたいものである。
年をとるのは
決して悪くない。
そして
こわくない。
私もアラ環と言われる世代になった。
これからも決して抗わず
前をみて
「今の顔」と共に
生きていくのだ。