vol.7 決まらないウエストニッパーの夜
著名な映画監督の住処であったそうな
住宅街の片隅にある
なんとも艶めかしいバー。
ちょっとリスキーな人ばかりが集まるそのバーは、
その当時、仕事帰りに立ち寄るには、
最高の場所であった。
恋が始まりそうな予感を感じるある日の夜、
少しでも自分をよく見せようと、
タイトなウエストニッパーを着けて、
イケてる感じのカメラマン(…だったと思う)とのデート。
興奮と、緊張と、
飲みすぎたアルコールのせいで、
案の定たいそう気分が悪くなった。
薄暗い階段をのぼってすぐのトイレで、
「もうあかん~。」と、
はずしたウエストニッパーには
バネのようなものがついていて、
なかなかうまく折りたためない。
あせりながら小さいバッグに、
ギュギュっと
無理矢理しまい込む。
いい感じに盛り上がり、
次の場所へとバーをでたとたん、
なんと~!
我慢できずに大失態をおかしてしまった。
はずかしい~。
申し訳ない~。
けれど、どうすることもで~き~な~い~!!!
月がキレイな深夜の道の片隅で、
まさかの事態にうろたえながら、
仕方なしに私の背中をさする彼。
介抱されながら、
今度は上からだけでなく下からも、
「ぶっ、ぶっ、ぶ~~~っ」と、容赦なく夜空に響いた濁音。
(注釈:もちろん音だけです)
人は力むといろんなところから、
我慢できない音がでる…。
上からと下からの
絶妙なハーモニーとともに、
過ぎ去っていったひとときの恋。
今となっては、
その彼の、
顔も名前すらも思い出せない…。
けれど、
鮮明に覚えているのは、
上からも下からもの大失態にもかかわらず、
「今夜は、決めるはずやったのに~(何をやねん!)」
と思う29歳の自分が、かなり肉食系だったこと…(笑)
そんな自分を
なつかしく思うアラカンの今は、
もちろんさっぱりポン酢系です。
えへっ。