vol.6 スリムでぶ厚い彼女
はじめて会った時は、いかにもツンデレ美大生らしいいでたちであった。
ある人の紹介で、私が開催しているプロフェッショナルコースを受講希望だという。
その後、こんなにも長い間、一緒に仕事をすることになろうとは、
たぶん二人とも想像していなかっただろう。
私の言葉足らずの構想やイメージを、ピピっと感じとることに、
とにかく、長けている人である。
休憩につまむお菓子を「なんでもいいから、買ってきて~。」と、お願いすると
「なんでもいいって言われるのが、一番むずかしいですやんか~。」
と、言いながら、
絶対はずしたものを買ってきたことがない。
すごい…。
昨年で一旦終了したオリジナルのDMは、
彼女なしでは決して続けられなかったことの一つだ。
彼女がまだ独身だったころは、深夜にまで及んで、
共に仕事をすることが多かった。
二人で「あーでもない、こーでもない。」と意見を交わしながら、
様々なことに挑んできた。
今の小社を存続してこられたのは、
彼女の尽力があってこそ。
今となっては上下の関係ではない。
完璧に、同志である。
近頃は、まったりと怒られることも多くなり、
私より私の仕事の仕方や癖を、熟知している節がある。
数年前第一子を身ごもり、
お腹が大きくなった彼女は、
私が担当する講演に同行した。
「先生、すみません。今日はアシスタントとしての動きが悪くて。」
その帰り道、そういう彼女に、
身重な時こそ、庇護を求めることが多いのにも関わらず、
仕事人気質全開の男前すぎるその言葉に、
頭が下がる思いであった。
そんな彼女も今は二人の子供に恵まれ、日々奮闘しているが、
私にとって、オーヴルにとって、
なくてはならない存在であるのには変わりない。
私よりもはるかに少ないであろう体脂肪で、
昔と変わらないスリムな人であるが、
その懐はふっくらと、ぶ厚い。
出会ってから17年、
その懐に甘えすぎないよう、
これからも同志とした関係でいたいと、
切に願う私である。